JMA吹奏楽講座シリーズ

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PERFECT BREATH
基礎から学ぶ管楽器の
「呼吸法・発音法」1

by Shoichi Kameya

はじめに

 誰でも楽器がうまくなりたいのです。いっぱい工夫してもどうしても上手く行かないときは息にまかせてみませんか?
 息がうまく行った時はアンブシュアまで楽になります。体も楽になります。本当に気持ちよく楽器が吹けるように基礎的な理論を是非学んでください。

1.呼吸法の楽器の演奏への効果

a. 体をしっかりさせて、息の支えを作ります

 「肺」という空間を体の中に持つ「人間」は、力を使うときにはいつも息を止め、体を固くして力を使うための足場を作ります。重い物を持ち上げる時はもちろんですが、針の穴に糸を通す時など、微妙な作業をする時も息を止めて力のコントロールをしています。
 重い物を持つときは肺を「陽圧」にして、そして力の少ない「微妙」な作業の時は「陰圧」にして体を固くして足場を作ります。この作業は主に「声帯」と「仮声帯」(図)を使って行われます。


a.声帯 b.声唇 c.仮声帯

b.心・感情と体の関係

 音楽の演奏では、この「息ささえ」が音色やニュアンスを作り出す、土台になります。そして、「横隔膜」は「息」を感情や音楽に合わせてコントロールしています。
 心と感情の変化は「息」の変化につながり、音楽表現につながります。感情の赴くままに演奏することは、自然に筋肉に命令を与え、感情が筋肉の動きに変わるのです。
 それは、とても精密に行われるので、動きをただバラバラに分解するだけでは何もわかりません。
 演奏という体を使った行為はよく、ドライバーが車を運転するのに似ていると言われますが、むしろ「馬」に乗っている感覚の方が近いでしょう。良く訓練されて、長年連れ添った馬は、大事な場面以外は車と違って自分で判断して前に進んでいきます。車と違ってドライバーが四六時中、感覚を研ぎ澄ましている必要はありません。名人が思うままに、自然に演奏している姿はこの感覚にとてもよく似ています。「体」という道具をいかに合理的に使うかを学ぶことが呼吸法の目的なのです。


横隔膜

c.呼吸法は全ての体の動きと 感情表現の基礎です

 管楽器だけでなく「弦楽器」「ピアノ」「打楽器」などでも、「呼吸」は演奏に、とても重要な影響を与えます。前にも述べましたように、弱音の演奏時には「肺」を陰圧状態に固定し、筋肉の足場を作ります。また、どの楽器でも、息を細く吐きながら演奏すると、ディミニュエンドを、美しく演奏することができます。そして、息をゆっくり吸いながら演奏すると、弱奏で大変デリケートで安定した表情が得られます。全ての楽器の演奏で、「呼吸法」は、驚くほどテクニックの安定に寄与します。
 管楽器の場合はこのことはもちろん、演奏に直結します。吸気時の体の状態、いわゆる「吸うように吹く」という状態で演奏することで、弱奏で大変デリケートで安定した表情が得られます。これが、演奏の時に、「横隔膜」が「吸う息」のように下がろうとする、「吸気的傾向」で、この時「肩の力」は完全にぬけます。管楽器だけでなく、楽器の演奏の時に肩の力をぬくことは、とても大切で難しいことのひとつですから、これは本当に驚くべき事です。
 涼しい表情の眉間から、音が出て行くような感じで演奏すると、高音でのびと開放感のある音色を得ることができます。この時、息は体の最深部から吹き上げられます。逆に眉間に全ての顔の表情が寄ってくるときは、凝縮した、抑圧された音色が得られます。
 このように、「呼吸法」は音楽表現と密接な関係を持っています。

d.「呼吸法」の管楽器演奏に及ぼす影響

 管楽器に有用な呼吸のテクニックは、アンブシュアや舌・姿勢にも決定的な影響を与えます。全ての基本が呼吸法であると言われる所以です。より効率的で効果的な「管楽器の演奏」のための「呼吸法」と、そこから派生する、弦楽器・ピアノ・打楽器・指揮はもちろん演劇の分野のテクニックにまで及ぶ「息の不思議」は、とても奥が深いものです。また、「呼吸法」は精神や健康にも直接影響を及ぼします。その探求は楽しく、楽器から楽に音が流れ出した時は、たとえようもなく幸福な瞬間です。

.実際の呼吸法
(腹式呼吸と胸式呼吸)

a.腹式呼吸
「腹式呼吸」とは吸気時に横隔膜が下降して腹部が膨らみ、呼気時に横隔膜が上昇して空気を押す呼吸法のことです。
「腹式呼吸」を正しく実践してみると、驚くべきことが起こります。「おなかの底から、たっぷりとした息を、気持ち良く吹き出す」というイメージだけで大幅に音色が改善されます。細かい色々なテクニックや劇的な強い表現などは、この単純な呼吸だけでできるわけではありませんが、「健康な体で自然の中で気持ちの良い呼吸ができたような」、「深い安らぎを得られたときのような気持ちの良い音の出」は、すべてのことが「健康な体」から始まることに似ています。不健康な音はどこかで必ず行き止まりが来ます。いつも気持ち良く楽器を吹くことができことが、楽器を演奏する上で、最も大切なことです。

b.腹式呼吸による吸気(吸う息)

「腹式呼吸」は、就寝時には自然に行われるので、横になって試して下さい。そして、これを意識的に拡張することを練習して下さい。「横隔膜」をはじめ、息を吸うための筋肉が共同して働く事が分かります。
 上体を起こすと、重力が働くため、吸気の始めから中程までは、内臓や腹部脂肪の重さだけで吸気が可能となり、横隔膜等の筋肉は、積極的には働きません。お腹を引っ込めて息を吐き切ってから力を抜くと、楽に息がお腹まで落ちていくような感じが味わえます。これで正しい吸気を理解することができます。吸気の後半ではさらに積極的に腹の周りを拡張する感じで「横隔膜」等が関与し、自然に胸郭もふくらみ、気持ち良い「吸気」を意識することができます。
 この「腹式呼吸」は、いろいろな健康法にも使われる呼吸法で、この呼吸法の訓練により積極的に吸気筋を使って実際に演奏に使える空気の容量を増加させることができます。


横隔膜の位置

横隔膜の位置と胸郭下部の関係

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基礎から学ぶ管楽器の
「呼吸法・発音法」2

by Shoichi Kameya

c.腹式呼吸による呼気(はく息)

 普通は呼吸法というと、吸気ばかりがクローズアップされますが、演奏には「呼気」つまり「はく息」が重要です。「腹式呼吸」によってお腹に楽にたっぷり入った息は・・・本当は肺に格納されているのですが・・・、風船が空気を吹き出すように、それ自体のエネルギーを解き放つことにより、体の下から上に向かって「吹き上げる」ように吐き出すことができます。また、呼気の後半においては 、必要に応じて「斜腹筋」「殿筋」「背筋」等のいわゆる「呼気筋」によって押し出されます。
 この、体の底からの息の吹き上げを「純粋呼気(じゅんすいこき)」と言います。吸気の時と同じくとても気持ちの良い息です。


脊柱伸筋と臀筋

斜腹筋

後背筋

d.胸式呼吸による吸気と呼気

吸気時に胸郭部分の吸気筋(肋間筋・背筋等)が働き、「胸郭が広がり」「肩及び腕が上がり」吸気筋は緊張します。
呼気時には、胸郭が狭まり肩が下降します。呼気時には重力のため呼気筋は働かないことがあります。一般に悪い呼吸法とされますが、「腹式呼吸」と連携することにより完全な呼吸をすることができます。


背筋


肋間筋

.理想的な呼吸法

 理想的な呼吸法とは、「腹式呼吸」と「胸式呼吸」の二つを連携させて使う呼吸法で、「胸腹式呼吸」「完全呼吸」「ヨガ式」など、色々な呼び方で呼ばれています。人間の体は部分として働くことはなく、必ず全体が関連性を持って働くものですから、呼吸法に関しても各部分の認識から入って、関連をふまえつつ、全体として働くように訓練する必要があります。

a.理想的な吸気(吸う息)

 吸気の前に、下腹部を引っ込めて、息を吐き切ってから力を抜くと、自然に下腹部に息が入ります。横隔膜が下降して腹部が膨らみ、胸郭下部も関連して膨らむことが分かります。その後、胸郭部分の吸気筋(肋間筋・背筋・鎖骨等)が働き胸郭を広げておこなう吸気をおこないます。全身を使った呼吸法です。
b.理想的な呼気(はく息)
二つの呼気(はく息) 
i純粋呼気
「腹式呼吸による腹からの吹き上げによる呼吸」

 腹式呼吸の基本的な息は、「斜腹筋」「殿筋」等の下腹部の「呼気筋」の息の吹き上げによる、「純粋呼気」です。体の最深部からの伸びのある息によって得られる音は、独特の「容易さ」「太さ」「艶」「密度」「透明感」などを伴って、音楽の表現に命を与えます。下腹部が収縮し、「ふいご」のように息を押し出します。上級者やプロの演奏者にとっても、「息をたっぷり使って演奏すること」は、とても大切なことです。「純粋呼気」で十分に響いた音は、その効果が絶大なことがわかります。管楽器の全てのテクニックのベースにこの「息のパワー」がありますから、毎日、練習しなければなりません。一度体がわかってしまうと、それ以上あまり意識しないでも済むようになりますので、四六時中考えている必要はありません。でもしばらく楽器を離れると、また忘れてしまいますので、思い出す為に、すこしだけ意識する必要があります。
 この「息の吹き上げ量」は、演奏上とても大切な要素です。体の大きな人はそれだけで楽器を吹くのが楽なのは、「息の吹き上げ量」に余裕があるからです。では、体の小さな人にはできないかというとそんなことはありません。水泳や色々な呼吸法の訓練は、明らかに吹き上げ量を増加させます。第四章ではこの吹き上げ量を増やす訓練をしっかり行います。普段に下腹を「べこべこ」動かすだけでもかなり吹き上げ量は増えますから、練習の前、曲の間、本番前待っている時などいつでも実行することができます。
 この本では、「純粋呼気」のことを「一の呼吸」と呼びます。
ii.対応運動:「横隔膜」による「純粋呼気」のコントロール

 実際の演奏時には、音楽の色々な表現の変化をつけるために、「横隔膜」の働きが「純粋呼気」をコントロールします。柔らかい表現・固い表現。冷たい・暖かい。明るい・暗い。鋭い・鈍い。あらゆる表現を具体的に、「横隔膜の押し下げ」による「対応運動」でコントロールします。
 「対応運動」による、呼気時のコントロールされた息を「2の呼吸」といいます。

 つぎの練習の1と2は座って、3は立って行います。
 座奏と立奏の明らかな支えの違いを意識しなければなりません。

c.演奏時の息の支え

 実際の演奏では上記 ii.の対応運動で息の支えを感じます。具体的に次の3つの場所で感じることができます。

i.鳩尾(みぞおち)

 対応運動の最初は、純粋呼気の吹き上げのコントロールを鳩尾で行うことにより、安定したテクニックが手に入ります。息を鳩尾に集めるように、下外向きに力をかけて支えます。この時、腹式呼吸のところで説明した、息を押し出す下半身の筋肉が働いて、息を吹き上げ、鳩尾が前方に押し出されるように息を支えます。口を閉じたまま、軽く咳をしてみると、わかりやすいですが、お腹の底からの「吹き上げ」が鳩尾のところで上下から「押しあって」して安定している感じです。


胸の真ん中を触りながら上から下りてくると骨のなくなった、柔らかい所です

ii.

 低音や深い音色のためには、お腹全体や腰で支えます。とても強くて太い音が出ます。鳩尾でのコントロールも同時に起こっています。腰は曲がり、お腹の最下部の肛門部分は、座面に下・前に向かって押し出され、恥骨は立ちます。


iii.丹田

 立って演奏する時は、「丹田」まで息を下ろし、そこに向かって息を落とすと、反動で息は吹き上がります。背中を下降した息の動線はお腹の最下部・肛門部分を通り下腹を経由して、臍から内下側に入っていきそのまま吹き上がります。この時、横隔膜の下降傾向とともに、胸郭下部は、「肋間筋」の収縮により、強い支えを作り出します。この動きはとてもはっきり外から観察できます。単に下腹で支えているだけの感覚で、アンブシュアも喉も、余計な緊張が取れ、基本的な息の下からの「吹き上げ」も上からの「対応運動」によるコントロールも自在になります。


下腹のことです

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「呼吸法・発音法」3

by Shoichi Kameya

.腹式呼吸の訓練
純粋呼気の吹き上げ量を増加させる練習

 それでは、実際の演奏のために、呼吸筋を目覚めさせ、体を演奏に適した状態にし、呼吸機能をたかめる運動を実践していきます。
 いわゆる、腹式呼吸の練習です。吸気時に腹がふくらみ、呼気時に腹が引っ込む呼吸です。この呼吸は誰でもしている、就寝時の無意識な呼吸ですが、起きているときにやろうとすると肩や胸で吸ってしまって、うまくできない人がいます。「吸う」は意識せず、「はく」ことから初めて、その反動で息がおなかに入っていくように感じてください。
 この呼吸は、いろいろな健康法で取り入れられている呼吸法で、総ての呼吸運動の基になるもっとも大切な呼吸です。

携帯からアクセスの方で、YouTubeにアクセスできない方は、是非PCから、トップページの「ヨガ・ブートキャンプ」を体験してください。「呼吸法講習会」ではこの続きを学習します。フルバージョンのDVDも有ります。

**上級までに、マスターするフルバージョンの呼吸法訓練メニュー**
1. 下腹を動かす練習
2. 息を吐きながら下腹を動かす練習
3. 下腹から体の表面に沿って息を吹き上げる練習
4.
−1天使の羽の運動(ひだり、前から後ろ)
−2天使の羽の運動(みぎ、前から後ろ)
−3天使の羽の運動(ひだり、後ろから前)
−4天使の羽の運動(みぎ、後ろから前)
5.
−1伸びの練習その1(前・表裏)
−2伸びの練習その2(上・後ろ・頭付け)
6.
−1肩の上げ下げ(左右)
−2肩の上げ下げ(両肩)
7. 首まわし
8.
−1天使の羽の運動 Part 2(ひだり、前から後ろ)
−2天使の羽の運動 Part 2(みぎ、前から後ろ)
−3天使の羽の運動 Part 2(ひだり、後ろから前)
−4天使の羽の運動 Part 2(みぎ、後ろから前)
9. 足もみ
10. 伸脚前曲げ (パー、グー、チョップ、チョップ曲げ)
11.
−1わきのばし1 足を右に
−2わきのばし2 足を左に
12.
ー脊椎矯正1脚閉じ
ー脊椎矯正2脚開き
13. 獅子のポーズ 表・裏
14. ワニのポーズ 表・裏
15. 伸び(各2回) 
右手・左足(アキレス腱)
左手・右足(アキレス腱)
両手・両足(アキレス腱・爪先)
両手・両足閉じて(アキレス腱・爪先)
グーで(アキレス腱・爪先)
16. 女王の横臥
17. サッカー体操

『ヨガを基本とした呼吸法の訓練』

1.下腹を動かす
 手のひらを下腹に当てて、「お腹を引っ込める」練習をします。下腹が自由に動く事を十分意識できる様にします。

2.下腹を動かし息を「はく」
 「お腹を引っ込める」ときに息を「はく」練習をします。「下腹の動き」と「息」のつながりを感じて行ないます。

3.天使の羽の運動 その1
 右手を左の胸に当て、肩を前から後ろに回します。腕は肩甲骨の付け根から動かします。肩甲骨が天使の羽の様に動く事を確認します。同様に左手を右の胸に当てて右肩も行ないます。

4.天使の羽の運動 その2
 同じく、右手を左の胸に当て、肩を後ろから前に回します。腕は肩甲骨の付け根から動かします。肩甲骨が天使の羽の様に動く事を確認します。同様に左手を右の胸に当てて右肩も行ないます。

5.伸びの運動と「のど」の開きの練習
 手を前で組み、息をはきながら手のひらを前に押し出す様に腕を伸ばします。同じく手のひらを上側から前に押し出しながら腕を伸ばします。同じく上に伸びます。次に後ろで手を組み、親指を内側から回し手のひらを下に向けて、息をはきながら下に引っ張るように伸ばします。息をはき終わって、元の姿勢に戻る時に、息が肺の隅々に満たされる事を体験して下さい。

6.肩の上下の運動
息をはくエネルギーで、左肩をあげます。息の力で肩が上がる様にします。同じく右肩と交互に行ないます。その後、両肩も行ないます。

7.首を回す運動
 息をはきながら、首を左から回します。息の力で回る様に感じます。痛いところがあったらそこで止めて、そこに息をはきかける様にします。

8.天使の羽の運動 その3
 左手を真っすぐ前に出し、時計回りに回転し、そこに右手を組んで、左の体側におきます。そこから息をはきながら前・上・後・下・前と腕を回転させます。「天使の羽の運動その1」を発展させた運動です。同じく右側も行ないます。

9.天使の羽の運動 その4
 左手を真っすぐ前に出し、時計回りに回転し、そこに右手を組みます。息をはきながら、下側から後ろを回して、ぐるっと前まで回転させます。同じく右側も行ないます。

10.足もみ

11.伸脚前曲げ (パー、グー、チョップ、チョップ曲げ)

12.体側を伸ばす運動
 左手をあげ、右手で手首を握ります。息をはきながら右手で左手を引っ張り体を右に曲げ、左体側を伸ばします。反対側も同じ様に行ないます。
13.脊椎矯正
1脚閉じ
2脚開き

14. 獅子のポーズ 表・裏

15. ワニのポーズ 表・裏

16. 伸び(各2回) 
右手・左足(アキレス腱)
左手・右足(アキレス腱)
両手・両足(アキレス腱・爪先)
両手・両足閉じて(アキレス腱・爪先)
グーで(アキレス腱・爪先)

17. 女王の横臥

18. サッカー体操

以上が基本的なプログ

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「呼吸法・発音法」4

by Shoichi Kameya

5.「丹田」
演奏に役立つイメージとして捉えるために

a.丹田
 「丹田」とは日本の武道や修法でよく使われる、修道法です。一種の「感想術」で、目を閉じ丹田に「神」「仏」「宮殿」「龍」などを思い描き、その結果、気を集め増幅することができるというものです。場所は、「腰椎三番と肛門とおへそを結んだ三角形の中心。つまり、前から見ておへその下10センチの奥にある」という説明が具体的です。いわゆる「へそ下三寸」です。
これは「下丹田」といわれる場所で、エネルギーの湧き出すポイントと云うことです。他に眉間(頭部全体を指すこともある)の「上丹田」。心臓(大きく胸を指すことがある)の「中丹田」と、3つの「丹田」があるといわれています。エネルギーの貯蔵庫といわれ、無尽のエネルギーが生まれる場所といわれています。三つの丹田を意識して練習すると、息のことが、とてもわかりやすいことがあります。筋肉と骨という、西洋医学的な名前よりもこちらの方が感覚的に意識しやすいのです。

b.下丹田
「下丹田」を意識して演奏すると、息の支えが深くなります。「下っ腹で支えて」ということです。斜腹筋・殿筋など、下腹部の筋肉群が収縮して、息を吹き上げる感覚です。低音では場所を意識するだけで効果が出ますが、底からの強い吹き上げを意識すると、どの音域でも太く艶のある表現豊かな音色が得られます。

c.中丹田
 「中丹田」は、鳩尾のところで外側に支えを感じます。口を閉じて「咳」をしたときに押し返してくるところです。多くの人がここを意識することで、大きな進歩が得られます。しかし、ここだけを意識すると低音楽器で音が固くなったり低音が出にくくなることがあります。
 非常に安定した支えのポイントです。しかし、ここを使うには「下丹田」からの息の「吹き上げ」が重要となります。「吹き上げ」に対する「対応運動」として捉えることができます。横隔膜で「吹き上げ」をコントロールするのです。鼻からの吸気による、上半身を充実させた吸気による、呼気時の下向きの息の支えもここで支えます。上半身を大きく広げて吸気し、「鳩尾にぶつける」「腰にぶつける」という吹き方です。この時とても強く安定した音が出ます。しかし、長い時間この呼吸だけを使っていると、体が固くなり、音が伸びなくなります。やはり下丹田からの伸びのある息(純粋呼気)が楽であることに変わりはありません。

d.上丹田
 「上丹田」は眉間(頭部)のポイントで、これだけを意識して音を出すことは不可能です。具体的な息をコントロールする筋肉をもたないからです。つまり「下丹田」「中丹田」からの息のイメージで「眉間」から「息を吹き出すように」「糸を引っ張り出すように」「音が広がるように」等のイメージで捉えるポイントです。実際の演奏には、もっと多様な頭部全体のボイシングポイントを使って音色をコントロールします。

e.丹田呼吸の効果
 「丹田」を演奏のイメージの助けとして捉える方法はとてもわかりやすいです。筋肉や骨の状態をひとつの言葉で表すことはとても理解がしやすく、長くイメージを持続することができます。また、イメージとして捉えるため、演奏時の体の緊張が緩和されます。「これとこれを注意して・・・・っと」考えていると上手く吹けません。演奏直前に一気にイメージがまとまることが必要ですから、エイッという感じで吹かないといけません。そのためにはこの「丹田」のイメージはとても有効な方法のひとつです。
 しかし、呼吸法の全体像がつかめていないと、言葉だけが一人歩きしてしまって、とても滑稽なものになってしまいます。「わかったつもりになってしまう」からです。耳と共に練習が必要です。

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「呼吸法・発音法」5
.
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6.ボイシング・ポイント

「ボイシング・ポイント」とは音を当てるイメージのポイントです。ポイントのイメージを明確に持つことによって、驚くほど自在に音色の変化を操ることができます。音を当てるポイントを明確に意識することによって、適切な筋肉が働き、呼吸に関係した体のバランスがとれ、様々な音色の変化が生まれるのです。
 つまり各ポイントの意識が音色を作り出す「スイッチ」になるということです。これは「赤」こちらは「黄色」と明確に使い分けることが大切です。
 さらには、各ポイントの音色を混ぜて、無限の音色の表現が可能になります。
音楽表現における「表情」「感情」を強く想ったときに、あるポイントが特徴的に働くことがあります。その時の体の部分の働きを覚えておけば、結果、「表情」「感情」と「ボイシング・ポイント」との関連が理解できます。そうして反対に「ボイシング・ポイント」から「表情」「感情」を導き出すことも可能なるということなのです。
 音楽では、心に浮かんだ「イメージ」つまり原因が直接「結果」なのです。天才は心に浮かんだことそのままにいわゆる「思うがままに」演奏します。心と演奏の同化、距離のなさが理想です。
 表現から息づかいを見出し、テクニックに昇華する。息づかいのテクニックから音楽の表現を導き出すという、「天才の手法を全ての人に」。管楽器だけでなく、全ての表現する行為にジャンルを問わず応用できるとても根元的なテクニックを学びましょう。

「ポジション1」
(効率のポジション)

 音の焦点を上下の門歯の歯先から下歯茎の外側の付け根に設定すると、声門閉鎖が強く起こり、音が前に出ます。アンブシュアは「すぽめ」が強く起こり、音は焦点の合った、コンパクトな物になります。息の消費も少なく合理的なポイントですが、大きく吹くと「平べったく」「息の音の混じった」音になりやすいので、息を出し過ぎないように注意する必要があります。また、このポイントは、中高音で派手なジャズのフレーズを吹く時に有用なポイントでもあります。このポイントからクレッシェンドして「ポジション2」へ無理なく移行することで中低音の強奏が可能になります。このポイントの理解から3Bのポジションのことが具体的にわかり、そこから4Bのポジションがはっきり理解できます。この3つのポジションが理解できると演奏に対する具体的な音色の選択の基礎がわかります。
 最も基礎的なポジションですからいつもはっきり自覚しておく必要があります。「2の呼吸」を使用します。

「ポジション2」
(安定のポジション)

 音の焦点を胸骨の最上端、「鎖骨の中央部のV 字型のくぼみ」に設定します。または、大きく「胸に」当てます。
このポイントは生き生きとした響きのある安定した音が得られます。低音域でアンブシュアを開かずに喉を開くことができます。のどの前側を開くというのは、このポイントに当たった時のことです。「のど仏」が「鎖骨のVのポイント」に下がり、甲状軟骨が下に強く係留され、反対に「口蓋喉頭筋」が働いて喉の奥が広がります。喉が沈む」感じがします。逆に耳の後ろ側が後方上側に引っ張られます。低音の基本的なポジションですが、中高音でもこのポイントを使うことで、安定した音を手に入れることが出来ます。中低音で「ポジション1」からクレッシェンドしてみると、よくわかるポイントです。「ポジション6」を経由して真上から当てる方法もあります。
呼吸は「2の呼吸」を使います。

「ポジション3B」
(楽に吹ける万能のポジション)

 音の焦点を上の門歯の歯茎から硬口蓋に設定します。このポイントは広い音域をカバーし、柔らかい響きの乗った音色を特徴とします。アンブシュアは余分な力がぬけて、楽になります。息の消費量は多く、ストレス無く息を使うことが出来ます。このポイントは、声楽的なたっぷりとしたフレーズ、圧倒的な音量のフレーズを吹く時に有用なポイントです。また、このポイントからクレッシェンドして「ポジション5」へ無理なく移行することで、伸びのある高音の獲得が可能になります。「1の呼吸」、吹き上げで行います。

「ポジション6」
(おとこまえポジション)

 音をうなじ(頭を下げたときに飛び出す大きな骨)に当てます。
輪状咽頭筋の活性化で喉の後ろ側の空きが担保され、全ての音域に於いて艶のある充実した良く通る、ハリのある音色を得ることができます。
ここから発射して2・1・3B・5・3Aに当てると、どのポイントでもとても安定感が出ます。中高音で大変充実した音色が手に入ります。劇的で説得力のある表現ができますが、疲れやすいので注意が必要です。テノールのハリのある魅力的な音色はここで作られます。「2の呼吸」で行います。

「ポジション4B」
(弱音のポジション)

 音を軟口蓋(喉ひこ)に当てます。フランス語の「R」または「うがい」をするときのポジションです。このポイントは豊かで安定したピアノの演奏に大変適しています。息が大量消費され、アンブシュアも大変楽になります。無造作に息を吹き込んでも大きくならず、だれでも中低音域の弱奏が可能となります。このポジションから4Aに移行することで、弱音で無理なく高音に移行することができます。
「1の呼吸」で行います。

「ポジション5」
(高音のポジションその1)

 焦点を「おでこ」に設定します。高音の基本的なポジションです。
大量の息を使って高音を演奏するポイントです。このため、表現力の高い、輝きのある表現が可能となります。ポジション6を経由してポジション3Bから突き破って「おでこ」に当てる感じで演奏します。大変楽に高音を演奏することができます。高音でのクレッシェンドはこのポイントを使います。
「1の呼吸」で行います。

「ポジション4A」
(高音のポジションその2)

 音を頭頂部に当てます。「純粋頭声」といわれるポジションで、弱声の高音のために適したポイントです。ストローで頭頂に息を吸い込むように、頭頂へ引き上げられた状態で演奏します。純粋で、美しいPPの演奏に適しています。「吸うように吹く」という吹き方です。目が開きます。ポジション4Bから無理なく上行することができます。
「1の呼吸」で行います。

「ポジション3A」
(高音ポジションその3)

 音の焦点を「眉間」に設定します。超高音の演奏に使います。鼻から頭頂に向かって息を吸いその時に引き上がった緊張を維持し、鼻をつまんで「ニンニン・・・・」と発音し、響きと横隔膜の強い対応運動を確認しから練習します。超ハイテンションで演奏します。超高音域のみ使用します。中低音で使用すると、鼻声になってしまいます。
強力な「2の呼吸」で行います

*胸声と頭声*

 管楽器を演奏する時、大きく分けて二つの奏法があります。声楽で一般的に言われる「胸声」つまり胸に響く低音と「頭声」つまり頭に響く高音です。ボイシングポイントという概念はそれをもっと具体的に分かりやすくした物です。ポジション1・2・6は胸声のポイントです。低音で特徴的なポイントです。ポジション3・4・5は頭声のポイントです。高音で使用するポイントです。しかし、実際の表現では、胸声で高い音を吹く時の特徴的な音色を使うこともありますし、逆のこともあります。音域・音量・表情に応じてボイシングポイントを上手に使い分ける必要があります。

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基礎から学ぶ管楽器の「呼吸法・発音法」6
by Shoichi Kameya

7. ウォーミングアップと日課練習

 ウオーミングアップとは体を楽器に適した状態に仕上げていく作業です。アンブシュアや姿勢、呼吸などを整えていきます。運動選手が、ストレッチをしたり、軽くジョギングをしたりするのと似ています。それから徐々に基礎練習を織り交ぜた日課練習に入って行く訳です。時間のないときはウオーミングアップが、基礎練習の代わりになる様にプログラミングすることができます。
 では最初に、体を目覚めさせる練習から始めましょう。初めての人は、丁寧に感じをつかみながら練習してください。慣れて来たら楽器を組み立てながらや、練習場に向かう途中でも実行して、練習にすぐ入ることができます。

A. S-Z-mm-Huu そして息が音になる。

 さて、いよいよここからが実際の練習です。コントロールされた呼気が気持ちよく音へと変換されます。呼吸筋を目覚めさせ、無理なく短時間に、楽器の演奏に適した体に仕上げていく方法を学びます。

 まず、柔らかい無声子音"S"を発音します。必要以上に息を吸い込んではいけません。つぎに、その息の音を保ったまま"U"を発音すると有声子音"Z"が出ます。その時、奥歯を軽く噛んでいると"ジー"っと振動し、より抵抗が増えます。実際に楽器を吹くときの、呼気の軽い抵抗感を体感します。空気の流れの一番細くなるところの抵抗感。マウスピースの抵抗感や楽器の抵抗感、声門による抵抗感、横隔膜の対応運動による抵抗感など、演奏時に感じる、これらの「抵抗感」や「息の支え」をここで感じることができます。
 つぎに「mmm」の練習。とても難しく感じる人が多いと思いますが、最初はできなくても、だんだん慣れる様にしてください。大量の息が鼻腔を通過して、お風呂に入って気持ちの良い時に出る声のような、空気のいっぱい通過した息で練習します。
 最後に「Huu」の練習。空気の混じった口笛の様に。頬を軽く膨らませて、抵抗感を感じなら、声を出します。

a.無声子音の練習:sss---

 息を前歯の隙間から軽く発音します。あくまでも軽く練習します。お腹は自然にへこんでいきます。力んだり、息が出すぎている人は、音量を下げるとか体の力を抜くとか、あまり一生懸命になりすぎないようにしてください。誰でも簡単にできるはずです。
吹きのばしの最中は頬を上げ、軽く微笑んだ様な感じで「明るい」音色で練習します。

音源:sss--------

b.有声子音の練習:ZZZ---

 無声子音の「スーー」という音が無くならないように声を出します。日本語の「ZU」のように「U」の音が残らないように十分気を付けてください。
 これにより、力のぬけた声門閉鎖の練習ができます。同時に横隔膜の横と後ろ側の支えを感じることができます。声門閉鎖とは吹奏時に横隔膜と対応して声門が閉じて、息をコントロールすることで、上級者で顕著に見られる特徴です。

音源:zzz--------

c. ハミングの練習:mmm---
口を閉じ、鼻から息を出しながら「mmm----」とハミングします。

音源:mmm---------

深い音色でトリルの練習をします。

空気の流れに乗せて練習します。

d. ほっぺを軽く膨らませて:Huu---

空気の音で音程なしで

音源:Huu--------

空気の音が無くならない様にGの音程で声を出します

深い音色でトリルの練習をします。

空気の流れにのせて練習します。


e. khuu----Hhoo-----Khoo(クー・ホー・コー)の練習

正確に発音をしながら、下記のグリッサンドを利用して、Khooのシラブルで、Dの音を安定させます。

準備中

c.d.e.の訓練用音源をご利用下さい。 女声用 男声用

f.息の振動への変換

 e.で練習した「Khoo」のシラブルで、下記の譜例を練習します。息がとても楽に振動に変換することを体感してください。最も大切な練習です。e.で練習した「サァーー」という唇の間を通り抜ける音が「楽器の音のつぼ」に当たって振動に変換するのを体感してください。
 ロングトーンの練習ですが、長さは気にせずに練習してください。メトロノーム60で3〜4拍ぐらいが適当でしょう。

*音の出る仕組み 
「振動音なしで楽器から音が出る」
 信じられないかも知れませんが、振動音なしで楽器から音が出ます。アンブシュアを締めないで、大きい開きで練習してみると、とても楽に演奏ができることがあります。金管楽器ではとても解りやすいのですが、あるフレーズをスケルトンタイプのアンブシュア・チェッカーで練習すると、唇の隙間の大きさにびっくりします。反対に全ての音がバズイングで正確に発音されるように少し狭いと、なんだか窮屈で吹きづらいことがよくあります。
「ホワイトノイズ奏法」
 音響学の先生の話。管楽器の発音の仕組みはとても複雑で、どうして鳴るのかは、よく解っていないのだそうです。しかし、それは「共振である」ということははっきりしていて、パイプオルガンのパイプの共振原理のように単純なものとして理解することができます。パイプオルガンの共鳴筒をはずしてみると、そこで鳴っているのは「サァーー」という「ホワイト・ノイズ」です。「ホワイト・ノイズ」とは全ての周波数を含んだ音です。白色の光は全ての色を含んだ色です。そこからとった名前で、「ホワイト・ノイズ」(白い雑音)は全ての音を含んでいます。
 そこに、管がセットされると、その管は自分の共振する音と寸分違わない音を正確に選び、響かせるのです。振動を作る側に音程の決定権があるのではなく、共振をする「管」のほうに決定権があるのです。とても驚くべき事です。もし振動を作る側が少しでも違った音を作ってしまうと、管は上手く共振してくれないのです。唇やリードが主導して音程を作るのではなく、息が鳴る感覚が正しいことがよくわかります。

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基礎から学ぶ管楽器の「呼吸法・発音法」7.
by Shoichi Kameya

g.アンブシュアの確認

 金管楽器とフルートは、アンブシュアの確認「ペチャペチャ」の練習。上下の唇を濡らして、くっつけたり離したりして、「ペチャペチャ」音を出して、唇の接点を明確にし、アンブシュアを確認します。音はなるべく唇の真ん中で薄く感じるようにします。リード楽器もアンブシュアの確認をしっかりしてください。

h.親指に息の焦点を
 親指を唇の前に置き、そこに息を吹きかけながら、3cmから5cmとだんだん離していきます。息の焦点が親指の先から逃げないように息の焦点をはっきりさせてください。息の焦点をイメージしながら、数回練習します。

  

B.息の振動への転換

 この練習は「息」の「振動」への楽な変換の練習です。"s" と"z"のシラブルで確認した「ポジション1」の「上下の歯先のポイント」に舌が息を正確に導くことができます。息の焦点は集中し最小の力で音を出します。これを「シラブル」として理解することもできます。 
 このポイント「ポジション1」で音はダイレクトに前に出るので、少量の息で音が出ることが特徴です。息をすこし強く吹き込むだけで大きな音を出すことができます。反対に柔らかい音を出すにはとても難しいポイントです。とても効率のよいポイントですから、体格の小さい人、力の弱い人が大きな音を出すことができます。このときの安定的な呼吸はいわゆる「2の呼吸」つまり「対応運動」によるものです。お腹の底から深い息を吹き上げるとこのポイントから、はずれてしまいますので注意が必要です。
 こう書くととっても難しい様に感じますが、実際にやってみると、実にあっけなくできることが分かります。
 この「ポジション1」は効率良く、少しの力で音が楽に出ますから、空気をあらかじめ大量に吸い込んでおく必要もありません。くれぐれも息を押し込んではいけません。
 息を「上下の歯先」の「ポジション1」に真っ直ぐ当てて演奏する、というのが結構難しい様です。釘とかハリを真っ直ぐ差し込んでいくように息のポイントを明確に意識することが大切です。吹き上げ量が増え過ぎると、焦点が上に「スッ」とずれてしまいます。息を押し込むと音が潰れるか、それをいやがって、焦点が後ろ上に逃げてしまいます。息を抜かず一つ一つの音を分けずに一本の息で練習してください。上手く行った時は少しの力でとても気持ち良く音が出ます。口の奥から歯先のポイントに息を当てて音を出し始めると、「口」「舌」「のど」「声門閉鎖」「吸気筋」「呼気筋」等の感覚が無理なく少しずつ目覚め始めます。あわてることなく、体の各部分の目覚めを体の内側から観察することが大切です。音が出ない時、かすれる時、揺れる時・・・・トラブルが発生した時には、むりやり調節して直そうとせずに、もう一度吹き直してみることです。
 どの譜例もその楽器のチューニング付近の管固有の音階を使用します。B管はinBでEs管はinEsで行います。低音楽器は一オクターブ下げて練習します。

a.息がツボに当たって音になる
親指への息の焦点をイメージしながら練習する。

b.一つの息で一つの音
一つの音を一つずつの息でていねいに練習する。

c.3つの音
 息の変化がないように練習する。

d.4つの音
 息の変化がないように練習する。

e.半音と4度下に
 下がる部分で、息に変化が起こりやすいので、注意して練習してください。

C.息の吹き上げ

 息の「吹き上げ」量を増やす練習です。下腹を引っ込ませて息を回し、「ポジション3B」(硬口蓋のポイント)に向けて息をあてて、響きの乗った軽いポルタメントで練習します。まず、息の量の必要な上行形の音型を使い、息の吹き上げ量を増やします。「下腹ー腰ー背中ー首の後ろー硬口蓋」と意識して息を回すことをで「吹き上げ」量を増やすことができます。「Hyu」のシラブルを使って、息にスピードをつけます。これは、いわゆる「シラブル」で音をコントロールする方法のイメージに、とてもよく似ていて、舌が息をボイシングポイントに導いてくれることに気付きます。「純粋呼気」の強化の練習です。
息の「吹き上げ」量が増えると共に、音の「色」「艶」「豊かさ」「響き」が増して、気持ち良く「息が振動に変換」できていることが分かります。明らかに音を出す気持ち良さがあることが、この「吹き上げ」ができているかどうか判断するための材料です。全てのテクニックにおいて「きもちよさ」というのが、そのテクニックができているかどうかの判断材料になります。

a.息の吹き上げ1
 "Hyu"で息を正確に3Bの硬口蓋のポイントに導きます。わからなければ最初は"Hi"で、慣れたら"Hi"---"Hyu" とだんだん深くしていって下さい。それに従って音は深くなり、息の吹き上げは増加し、中低音に艶と深みが生まれます。「クレッシェンド」で、「1の呼吸」で行います。

b.息の吹き上げ2
 「クレッシェンド」で「1の呼吸で」練習します。

吹き上げ量が増えると、特定のポイントに息の焦点が合ってくることがあります。それに面食らうことなく適切な3Bのボイシングポイントを意識して練習することが大切です。
 エクササイズのなかで、からだが硬くなってきた時にはいつでも、この「吹き上げの練習」で体を楽な状態に戻すことができます。

c.横隔膜最深部からの吹き上げ

 

 低音の安定の為の基本的な練習です。椅子に座って、腰に深く溜め、息を吐く時に腰からの息で、胸を押し上げるようにその息を胸に向かってぶつけるように"S"で発音します。腰から押し出される息に押されて胸が上がり、空気が腰から移動して胸部がふくらんでいくのを確認してください。同じフォーメーションで、低音を演奏します。胸への音の座り・胸に当てることによる低音の練習です。腰から胸への太い息の筒を意識し、腰から胸へ息を当て、内側から胸がおしあげられる感じで、「ポジション2」に喉が沈むように「1の呼吸」で行います。

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基礎から学ぶ管楽器の「呼吸法・発音法」8.
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D.喉を開ける練習

 管楽器の演奏時に喉を開けることについての重要性はとても強調されますが、事実、その音色に与える影響は驚くべき物があります。ほとんどの人が、音色の「詰まり」をアンブシュアの操作や舌の操作、息の操作、あるいは音それ自体の加工、つまり「あとぶくれ」等によってごまかしています。昔からいろいろな方法でそれを理解させようと先生達は苦労してきました。実際に鏡を見て喉が開いているかを確かめる。あくびしてみる。スプーンで舌根を押して強制的に下げる等、かなり無理をしていました。なぜなら楽器を演奏する時はこの開いた喉の感覚が不可欠だからです。クラッシックの声楽発声の喉の状態です。
 この状態を「アクビの喉」という事がありますが、アクビをする時にも喉がフルオープンにならない人がいます。舌が上がったままアクビができます。「あくびのど」だけでは不十分な説明なのです。意識して、舌の奥、つまり舌根を下降させ、喉の奥を上と後ろに向かって広げて、大きな空間を作る体験をする必要があります。「喉を開ける」ことを意識するだけで、豊かな音色を手に入れることができます。
 ここで大きな問題が有ります。あくびの喉は声帯も開いているということです。また舌根も下がり切ってしまいます。この状態では実は演奏は不可能です。喉を開けることばかりに注意が行き過ぎて、演奏上障害が起きるのはこのような時なのです。指導者が未熟なときも生徒にとって悲劇が訪れるのです。
 大切なのは「あくびの状態の筋肉のバランス」が求められるということなのです。甲状軟骨(のどぼとけの骨)が下に向かい、その対角線上ののどの奥が斜め後に引かれ、うなじが後に引かれると言うバランスができます。この状態を「喉の空いた状態」と呼びます。まさに「あくび喉」なのです。レントゲンの直接撮影による観察でもわかる通り、実際の演奏時には、舌はあくびの時の様には下の位置をとりません。「のどひこ」上部は3cmから5cmぐらい、斜め後ろ上方にに引かれています。喉の前側は開き、甲状軟骨が下がる状態でも、歌手は全ての母音と子音を使いこなすことができます。あくびのどの状態で、舌は表現に応じて自由に動くことができるのです。
 舌、つまり「シラブル」を使って全てのテクニックを操る方法は、この喉を開けてということと完全に矛盾してきます。どちらも偏ったイメージではうまく発音できないということになります。
 舌は音域を移り変わったり音程や音色をコントロールする為に欠くことのできない物ですが、過度に頼り過ぎると、ハイトーンで舌が高い位置をとったとき音色はとても貧弱な細い物になり、低音では柔らかすぎることがあります。初心者のうちはそれでも出るだけでいいのですが、中・上級者ではそれでは多様な表現が思う様にできなくなってきます。
 甲状軟骨が下降して前の開きを作り、のどひこが、後上方に引かれ、首の後の筋肉で、真後ろの空きが完成したとき、同時に舌骨から胸骨と肩甲骨を結ぶ筋肉が働き、チェストアップが完成します。そして、体の後側の背骨からの「割り」つまり喉を深く空けるという、完成形となります。
 その時、下腹部からの吹き上げの力と相まって、胸郭下部が収縮し、とてもバランスの良い演奏姿勢ができあがるのです。喉と胸を開けるという意識によって、歌唱や吹奏に適した筋肉バランスが瞬時にできあがるというのは、本当に「自然の作り出した奇跡」としか言いようがありません。全ての筋肉が音を出す為に緊密に協力し合った時、例えようもない素晴らしい音が奏でられるのです。

a.低音の練習(のどの前側を開け、響きの豊かで音量の大きな低音の練習。喉から唇までの長い筒が振動している実感を味わう)
 首を上げて天井を向き、ポジション2の「鎖骨のポイント」に指を当て、そこから口にかけて、太い真っ直ぐの筒を意識して、そこをゆっくり息を通し、下腹部からの吹き上げで「Hooo-」という、ビール瓶を鳴らした時のような音を出します。「鯉のぼり」のように「吹き流し」のように、吹き上がった息で喉と体が整形されるように、また、ヨガの「ライオンのポーズ」そのままのイメージで、一音ずつ息を使いきって練習します。声帯から唇までの筒の内側の粘膜の襞が息で擦られて、気持ち良く楽に震える感じを味わいながら、「1の呼吸」で練習します。

 低音の練習は3段階に分けて訓練します。

*前章「c.横隔膜最深部からの吹き上げ」。「ポジション2」の明確な意識により少量の息によるしっかりした低音を獲得することができます。

*本章の、喉の前側の開きの練習があります。前上への意識の開きです。吹き上げによる響きのあるとても豊かな低音です。

*最終的にJ章でとても説得力のある最終的なテクニックを確定します。

 この3つの段階による練習で、「柔らかい響きのある低音」から、「コンパクトでしっかりした軽い低音」、「圧倒的な音量の低音」と、自由自在に操ることができるようになります。

 アンブシュアの意識の改善と喉の開きは切っても切れない関係にあります。アンブシュアは、「口」から始まり「声帯」までの「ながーい筒状の物」を意識します。その内側は「粘膜」で覆われ、とても自由に息で震えます。息による吸い付きや押し広げなどの影響も想像以上に働きます。体感的には喉から口までの管の内側がまんべんなく震える感じです。どこも振動しないと感じる人もいるようです。なぜなら上手く行くと、気柱の中の空気全体が鳴って、「リコーダー」のように鳴るので、そのように感じられるのかも知れません。口は体と楽器を密閉し息漏れをしなくするためだけの道具で、けっして主体的に発音をする感覚ではなくなります。リードも同じ感覚になります。唇は「消化器官がめくれて外側に出ている物」で、基本的に粘膜が裏返って外側に出てきている物です。この柔らかさのため、マウスピースにくっついて、完全に気柱を密封することができるのです。この役割のため、少し濡れていた方が合理的で、少し押しつけた方がその役割を果たしやすいのです。

b.音色の向上
 吹奏時に欠かせない「のどの後側を開ける」練習です。手で首の後ろを内側から左右にめくるようにしながら腰に息を吸い込みます。首の後ろから背中に広がった「亀の甲羅」のような空間を意識し、その空間を維持したまま、斜腹筋を引いて「1の呼吸」で練習します。この練習で響きの乗った音色の豊かさが、びっくりするほど簡単に出すことができます。

c.首をかしげて
 「喉の後ろを開ける」ことは音色の向上と、心地良い吹奏感のために、とても大切なことですが、とてもわかりにくいことでもあります。試しに首を左か右に傾けてみてください。スジがつったように突っ張ります。この状態で楽器を吹くと、とても不思議なことが起きます。とても簡単に後ろの開きを自覚することができるのです。真後ろを開けるためには首を上に向けます。頭で首の後ろを揉むようにします。その後「後ろの開き」意識して練習します。
首を曲げて、「1の呼吸」にて行います。

この方法でだれでも後の開きを意識することができます。事実ほとんどのバストロンボーン奏者は首が曲がっています。でも、後が真っすぐに開けられる様になった時には、さらにコントロールされた音色を奏でることが可能となります。

d.弱音の練習
 口から首の後ろの大きな骨、背中を通って腰まで息を吸いながら吸気によって"u"で声を出します。体を維持し斜腹筋を収縮させ息を吹き上げて練習します。吸気の時の体の使い方で音を出すということです。「1の呼吸」で練習します。

前述のポジション4の練習です。弱音をとても簡単にコントロールすることができます。必ず知っておかなければならないテクニックです。

e.明るい音色
 口を開き、軟口蓋に向かって息を吸いながら、「鎖骨の中央」「首の後ろの骨」「軟口蓋」の三点を緊張させます。矢印の方向へ引っ張られる感じです。
もっとも引っ張り合った状態で次の練習をします。
「蝶形骨」の蝶々が羽根を広げたように喉の奥を開けて「1の呼吸」にて練習します。

『蝶形骨』
頭蓋骨の一部である蝶形骨。蝶が羽根を広げたようなこの骨を開けるように感じることによって、豊かな響きの乗った音色が手に入ります。

f.跳躍の練習

高音への跳躍の練習は3点の緊張を一気に行います。喉を開ける練習の最終練習です。「アー」と声を出しながら、急にびっくりしたように「ホッ!」と息を吸います。その瞬間に3点の緊張を作ります。跳躍の直前に3点を一度に収縮させる練習です。

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基礎から学ぶ管楽器の「呼吸法・発音法」9.
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E.横隔膜による息のコントロール

横隔膜の対応運動による純粋呼気のコントロールの練習です。ここまで学んで来た「1の呼吸」をコントロールして、安定した演奏をする為に欠かせない、息の支えを学びます。ほとんどの場面でこの「息の支え」は演奏上の重要な要素となりますので、しっかり理解してください。


a.「せき」をする
 鳩尾に手を当て「せき」をします。この時、「鳩尾」が手を押し返してくるのを確認しその支えを確認します。

b.上の音にアクセントを付けて
 座って、上の音にアクセントを付けて、鳩尾が軽く押し返されるように練習します。「2の呼吸」で行います。

みぞおちの反応を意識しながら練習します。

c.上の音を取り出して

 座って、アクセントの付いた上の音のみを取り出して、鳩尾の押し返しを確認しながら練習します。「2の呼吸」で行います。

 これが管楽器を演奏するための基本的な息の支えです。

d.腰で支える

 座って、腰の支えで練習します。腰を曲げるように後ろ下へ体を沈めながら「2の呼吸」で行います。

e.立奏時の息の支え

 息の支えを下丹田まで下ろし、息の循環を意識して、一音ずつ息を使い切って「2の呼吸」で練習します。息のイメージの動線は、背中を下がり、腰から肛門・恥骨・下腹を通り、へそから内側下方へ、それから、下がった背中のすぐ内側を上昇しポジション6−4A、そしてアンブシュアへと向かいます。この時下腹はポッコリ膨らんだ感じになります。下丹田で支える感じです。

 

f.連続した一本の息で

「鳩尾」「腰」「下丹田」の3つの支えで練習します。各支えを意識して、準備・持続させて、連続した一本の息で練習します。


g.立奏と座奏の息の支えの違いについて</font>


 座奏時は鳩尾から腰に感じた息の支えを意識します。骨盤のローリングにより丹田からの息の吹き上げは「前側」から「おへそ」を経て「体の内下側」に向かい、その後吹き上がります。
 立奏時はその息を丹田まで下ろすことで、上記の丹田の吹き上げが自然に起きることを確認します。その時、殿筋をはじめ全ての筋肉が協力して働くことが自覚できます(図)。
 この感覚は大変具体的で「そのような気がする・・・」というような、曖昧な物ではなく、体の外からでも視覚的にはっきり確認できるものです。

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基礎から学ぶ管楽器の「呼吸法・発音法」10.
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F.急速なフレーズの練習・敏感な横隔膜の練習

 速いフレーズを演奏する時は、敏感な横隔膜の動きが必要です。犬が大好きな主人を出迎える、とても嬉しそうな息をする時のような、急速な呼吸です。この時、横隔膜は最上部に係留され、「吹き上げ」を受け止めることによる呼気の「コントロール」を行います。

胸郭を上げ、横隔膜位置を上にとり、犬の呼吸の練習をします。吸気と呼気とを急速に出し入れします。

次に、肋間筋を絞る練習をします。練習の前に、胸の前側の肋間筋を絞って、息を吐き切り、力を抜きます。すると「ポンッ」と息が少量、肺に戻ります。この時決して吸い込んではいけません。この、戻った息を絞りながら練習します。少量の息で練習します。敏感な横隔膜の練習です。口の中の息だけで吹く感覚です。横隔膜は高い位置で非常に敏感に反応します。ゆっくり練習して、スムーズな動きを体感してから、すぐに速くする。という練習も有効です。

a.肋間筋を絞る練習(肋間筋の訓練)

 両手で肋骨下部を絞るように「ハッハツハッ」と肋間筋を絞りながら息を吐き、最後に緊張し切ったところを瞬間的にゆるめ「ポンッ」とはじけた感じで息が戻るのを体感します。その戻った少ない息を肋間筋で絞りながら次の練習をします。決して息を吸い込み過ぎてはいけません。

b.同じく肋間筋を絞りながら練習します。

決して息を吸い込んではいけません。

高い位置の横隔膜の敏感な反応の練習です。

c.さらに吸気量を増やして練習します。

この練習は、管楽器の世界ではあまり行われない画期的な練習ですが、危険を伴いますので、適切な指導のもとに練習する必要が有ります。

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基礎から学ぶ管楽器の「呼吸法・発音法」11.
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G.アタックの練習

a.アタックの仕組み
 口を閉じて咳をして見てください。声帯でせき止められた息が一気に破裂してアタックとなります。咳と同じように、舌でせき止められた息がはじけて「アタック」となります。アタックは音に命を与えます。アタックは口の中の息だけで、陽圧の舌突きのように行います。息を前に吹き出す感覚があるとコントロールが効かなくなります。普通の舌打ちの逆の「陽圧」の舌打ちの練習が有効です。これにより、ピアニシモでもフォルテシモでも同じアタックで演奏することができます。


b.咳からアタック
鎖骨の真ん中に空洞を作っておき痰を切るように咳払いを、口を閉じたまま行ないます。各音の前で、咳をしてその後発音します。慣れてきたら「陽圧の舌打ち」にて行います。1音1音「はじく」感じで練習します。「2の呼吸」の呼吸で行います。

c.アタックから息にのせて
 最初の音だけはじいて1フレーズで練習します。前の練習と同じく慣れてきたら、「陽圧の舌打ち」にて行います。「アタックされた音」はスッと離れて楽に響くことを体験することができます。「2の呼吸」で行います。

d.音の出だしに迷った時
 音を出す前に下腹を2度引っ込めて息を出してから、3度目の動きの時に音を出してみてください。すっきり音が出ます。いろいろ複雑に絡み合ったトラブルを持つ人は、この練習で、演奏のための意色々なタイミングが合って、「エイッ!」と一気にできるようになることがあります。
 先にお腹を動かし息を、イメージで送り込んでおいてから吹くという方法もあります。吹く前に、横隔膜を一時停止するというテクニックで、何もない空中から物質化が起こるように、引っ張り出すように発音します。発音の瞬間は息が使われる感覚はなく、消費される息もとても少なく感じられます。

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基礎から学ぶ管楽器の「呼吸法・発音法」12.
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H.スタッカートの練習
a.弾かれた舌
 スタッカートの時、前項で説明した「アタック」の弾かれた舌が、即座に戻って息を遮断し、「上歯の後ろ側」か「上歯の歯先」に演奏のための息が準備されていることを確認します。試しに、「パッパッパッ」と連続した息と唇で発音してみて、息が正確に止められて、次の発音の準備がされることを確認してください。声帯から唇までの管は最初の音が出る寸前の「瞬間」に準備されます。「舌が知っている」とか「舌で感じる」という感覚はまさに正しい事がわかります。そして、「弾く」瞬間を迎えます。「止められた時」が次の「発射の時」です。「止める」と「発射する」という二つの動作が一つになります。これがとても重要な事です。
 常に正確なスタッカートをしなければなりません。余分な響きは残してはいけません。空気の流れを舌が止めている、気持ちの良い安定感を体感します。

b.指でトントン
鎖骨のVの凹みの所を指でトントンとたたき、それに合わせてVの底の1点から音が点となって出ていくような感じで、一つの息の流れに乗って軽いスタッカートで行います。はじめに、声で練習します。「ハッ・ハッ・ハッ」と、声帯のみで息を弾く練習をします。同じ感じで楽器で練習します。(実際に解りづらいので、PC用のページでは動画をアップする予定です)
 

c.舌から感じる
 奥歯を軽く噛んでリラックスしたとき、舌は口の中全体にあります。ここから顎(あご)を吹奏位置まで落とします。この時、舌は上顎に残り、舌先から横側にかけて、楽に「ペッタリ」くっついていることがわかります。これがで、力のぬけた基本的なポジションがわかります。この時の舌の下にできた空間が、吹奏空間であり、舌の自由に動き回れる空間です。この状態から、お腹の力をぬくと、「鼻から息が入って来て」、「喉の後ろがストンと落ち」、「お腹が楽に膨らみ」、そのあと「胸郭が自然に広がります」。演奏の為の息が吸われて、リラックスした状態ができあがります。これが、腹式呼吸の完成です。ここから「一の呼吸」によって、お腹から吹き上げられた息は舌先で軽く止められて、その後はじけて「アタック」となります。息の送りが止まると、舌は自動的にホームポジションへと戻ります。気道は息によって確保されています。最初からこの空間を確保しようとすると、余計な力が「舌」にも「口」にも「体」にも入ってうまく行きません。息によって演奏のための、準備された体ができあがります。気道は、「呼吸筋によって確保されている」という意識から、「息で確保されている」という意識に移行することで、体の余計な力がぬけ「楽にふける」という感じが生まれます。その結果「のどを開ける」「胸を開ける」という状態が維持されている事がわかります。
 実際の演奏では多くの場合、吸気は上記の楽な呼吸の「胸郭が自然に広がった」後、積極的に胸を広げ演奏の準備は完成します。ここから演奏される「二の呼吸」の時は、気道は呼吸筋によって、確保されている様に感じます。「一の呼吸」で吹き上げられた息を前提とした、「二の呼吸」では最初から確保された意識になり、「のどを開ける」「胸を開ける」という状態が維持されている自覚がはっきりと生まれます。純粋呼気が横隔膜でコントロールされてしっかりした安定感が生まれます。スタッカートは呼吸の事がはっきりわかる瞬間でもあります。

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基礎から学ぶ管楽器の「呼吸法・発音法」13.
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I.タンギングの練習
a.息が舌で切り分けられる 

発射する「ポジション6」と当てる「ポジション1」「ポジション2」の意識をしっかり持って練習します。ゆっくりのスタカートから始め、徐々に速くしていきます。速くしていく過程で、舌の「止め」が次の音の「始め」と認識できる所に細心の注意を払うこと。無理して速くせず、「気持ちの良い」感覚を十分に味わって練習する。息はレガートタンギングでスタッカートに切り分けられます。「2の呼吸」の呼吸で行います。

b.レガート
レガートで練習します。「1の呼吸」で行います。

c.アタックとタンギング
 「息を出さない」「音をポッ!と当てるだけで鳴るよ」「そよぐ舌」等の昔からのアドバイスがあります。舌は息というエネルギーで動き、比較的速いテンポの時に楽に動きます。基本的な練習はこの「比較的速いテンポ」から、速度を下げて、「テヌート」と「レガート」のタンギングの練習をします。長い音からつながった、十六分音符はまず、長い音を減衰させない事が大切です。十六分音符はその後にぶら下がるように練習します。この時舌が落ちてこないように、十分な息で、舌が気持ち良く弾む感じになります。後ろの開きを維持すること、つまり、ポジション6で引っ張っておくことはアタックとタンギングの安定にとって、欠くことのできない要素です。 
 緩叙楽章において十分に「ポジション6」で引っ張った上で、前に吹き続ける音色重視のテクニックと同じで、喉の前後の開きはテクニックの安定に欠かせない物です。舌はピアノのハンマーのようにいつも明確に突かれます。楽な舌はキノコのように口の中にあって、その一部がアメーバーの様に伸びて口蓋に達しタンギングとなります。弾かれた音はとても楽に「離れて」行きます。口の中の息だけで弾く事が重要です。メインタンクとサブタンクがあるように、余裕と息の溜めが必要です。息が音と直接つながると、とても汚いアタックになります。必要以上の息が音の出だしを破壊するということです。タンギングをしようとした時に口や体が硬くなって、息が細くなってしまう人がいます。伸びのあるいい音を「太いまま」切る必要があります。

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基礎から学ぶ管楽器の「呼吸法・発音法」14.
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J.スフォルツァンドと低音
 鎖骨のポイント「ポジション2」の練習

a.スフォルツァンド 

鎖骨のV字型の凹みに指をあて、そこにめがけて瞬間的に息を吸ってぶつける。これにより、三点の緊張が瞬間的にできる。各音の前に瞬間的に吸気を行い、次の音型を「2の呼吸」で練習します。

この練習によって無理なく正確にはっきりしたアクセントとスフォルツァンドを手に入れることができます。

b.楽曲による練習 チャイコフスキー:クルミ割り人形

c.低音

鎖骨のVのところに、のど仏を沈め、底の一点に音が集まってくるように、強いアタッ
クなしで「2の呼吸」で練習する。

 

d.低音2

より深く喉を沈める意識で、体の状態をセットしてから、“i”の母音で練習します。

e.楽曲による練習 ベートーヴェン:交響曲第九番四楽章より バス・トロンボーン


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