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PERFECT BREATHING
基礎から学ぶ管楽器の「呼吸法・発音法」8.
by Shoichi Kameya

D.喉を開ける練習

 管楽器の演奏時に喉を開けることについての重要性はとても強調されますが、事実、その音色に与える影響は驚くべき物があります。ほとんどの人が、音色の「詰まり」をアンブシュアの操作や舌の操作、息の操作、あるいは音それ自体の加工、つまり「あとぶくれ」等によってごまかしています。昔からいろいろな方法でそれを理解させようと先生達は苦労してきました。実際に鏡を見て喉が開いているかを確かめる。あくびしてみる。スプーンで舌根を押して強制的に下げる等、かなり無理をしていました。なぜなら楽器を演奏する時はこの開いた喉の感覚が不可欠だからです。クラッシックの声楽発声の喉の状態です。
 この状態を「アクビの喉」という事がありますが、アクビをする時にも喉がフルオープンにならない人がいます。舌が上がったままアクビができます。「あくびのど」だけでは不十分な説明なのです。意識して、舌の奥、つまり舌根を下降させ、喉の奥を上と後ろに向かって広げて、大きな空間を作る体験をする必要があります。「喉を開ける」ことを意識するだけで、豊かな音色を手に入れることができます。
 ここで大きな問題が有ります。あくびの喉は声帯も開いているということです。また舌根も下がり切ってしまいます。この状態では実は演奏は不可能です。喉を開けることばかりに注意が行き過ぎて、演奏上障害が起きるのはこのような時なのです。指導者が未熟なときも生徒にとって悲劇が訪れるのです。
 大切なのは「あくびの状態の筋肉のバランス」が求められるということなのです。甲状軟骨(のどぼとけの骨)が下に向かい、その対角線上ののどの奥が斜め後に引かれ、うなじが後に引かれると言うバランスができます。この状態を「喉の空いた状態」と呼びます。まさに「あくび喉」なのです。レントゲンの直接撮影による観察でもわかる通り、実際の演奏時には、舌はあくびの時の様には下の位置をとりません。「のどひこ」上部は3cmから5cmぐらい、斜め後ろ上方にに引かれています。喉の前側は開き、甲状軟骨が下がる状態でも、歌手は全ての母音と子音を使いこなすことができます。あくびのどの状態で、舌は表現に応じて自由に動くことができるのです。
 舌、つまり「シラブル」を使って全てのテクニックを操る方法は、この喉を開けてということと完全に矛盾してきます。どちらも偏ったイメージではうまく発音できないということになります。
 舌は音域を移り変わったり音程や音色をコントロールする為に欠くことのできない物ですが、過度に頼り過ぎると、ハイトーンで舌が高い位置をとったとき音色はとても貧弱な細い物になり、低音では柔らかすぎることがあります。初心者のうちはそれでも出るだけでいいのですが、中・上級者ではそれでは多様な表現が思う様にできなくなってきます。
 甲状軟骨が下降して前の開きを作り、のどひこが、後上方に引かれ、首の後の筋肉で、真後ろの空きが完成したとき、同時に舌骨から胸骨と肩甲骨を結ぶ筋肉が働き、チェストアップが完成します。そして、体の後側の背骨からの「割り」つまり喉を深く空けるという、完成形となります。
 その時、下腹部からの吹き上げの力と相まって、胸郭下部が収縮し、とてもバランスの良い演奏姿勢ができあがるのです。喉と胸を開けるという意識によって、歌唱や吹奏に適した筋肉バランスが瞬時にできあがるというのは、本当に「自然の作り出した奇跡」としか言いようがありません。全ての筋肉が音を出す為に緊密に協力し合った時、例えようもない素晴らしい音が奏でられるのです。

a.低音の練習(のどの前側を開け、響きの豊かで音量の大きな低音の練習。喉から唇までの長い筒が振動している実感を味わう)
 首を上げて天井を向き、ポジション2の「鎖骨のポイント」に指を当て、そこから口にかけて、太い真っ直ぐの筒を意識して、そこをゆっくり息を通し、下腹部からの吹き上げで「Hooo-」という、ビール瓶を鳴らした時のような音を出します。「鯉のぼり」のように「吹き流し」のように、吹き上がった息で喉と体が整形されるように、また、ヨガの「ライオンのポーズ」そのままのイメージで、一音ずつ息を使いきって練習します。声帯から唇までの筒の内側の粘膜の襞が息で擦られて、気持ち良く楽に震える感じを味わいながら、「1の呼吸」で練習します。

 低音の練習は3段階に分けて訓練します。

*前章「c.横隔膜最深部からの吹き上げ」。「ポジション2」の明確な意識により少量の息によるしっかりした低音を獲得することができます。

*本章の、喉の前側の開きの練習があります。前上への意識の開きです。吹き上げによる響きのあるとても豊かな低音です。

*最終的にJ章でとても説得力のある最終的なテクニックを確定します。

 この3つの段階による練習で、「柔らかい響きのある低音」から、「コンパクトでしっかりした軽い低音」、「圧倒的な音量の低音」と、自由自在に操ることができるようになります。

 アンブシュアの意識の改善と喉の開きは切っても切れない関係にあります。アンブシュアは、「口」から始まり「声帯」までの「ながーい筒状の物」を意識します。その内側は「粘膜」で覆われ、とても自由に息で震えます。息による吸い付きや押し広げなどの影響も想像以上に働きます。体感的には喉から口までの管の内側がまんべんなく震える感じです。どこも振動しないと感じる人もいるようです。なぜなら上手く行くと、気柱の中の空気全体が鳴って、「リコーダー」のように鳴るので、そのように感じられるのかも知れません。口は体と楽器を密閉し息漏れをしなくするためだけの道具で、けっして主体的に発音をする感覚ではなくなります。リードも同じ感覚になります。唇は「消化器官がめくれて外側に出ている物」で、基本的に粘膜が裏返って外側に出てきている物です。この柔らかさのため、マウスピースにくっついて、完全に気柱を密封することができるのです。この役割のため、少し濡れていた方が合理的で、少し押しつけた方がその役割を果たしやすいのです。

b.音色の向上
 吹奏時に欠かせない「のどの後側を開ける」練習です。手で首の後ろを内側から左右にめくるようにしながら腰に息を吸い込みます。首の後ろから背中に広がった「亀の甲羅」のような空間を意識し、その空間を維持したまま、斜腹筋を引いて「1の呼吸」で練習します。この練習で響きの乗った音色の豊かさが、びっくりするほど簡単に出すことができます。

c.首をかしげて
 「喉の後ろを開ける」ことは音色の向上と、心地良い吹奏感のために、とても大切なことですが、とてもわかりにくいことでもあります。試しに首を左か右に傾けてみてください。スジがつったように突っ張ります。この状態で楽器を吹くと、とても不思議なことが起きます。とても簡単に後ろの開きを自覚することができるのです。真後ろを開けるためには首を上に向けます。頭で首の後ろを揉むようにします。その後「後ろの開き」意識して練習します。
首を曲げて、「1の呼吸」にて行います。

この方法でだれでも後の開きを意識することができます。事実ほとんどのバストロンボーン奏者は首が曲がっています。でも、後が真っすぐに開けられる様になった時には、さらにコントロールされた音色を奏でることが可能となります。

d.弱音の練習
 口から首の後ろの大きな骨、背中を通って腰まで息を吸いながら吸気によって"u"で声を出します。体を維持し斜腹筋を収縮させ息を吹き上げて練習します。吸気の時の体の使い方で音を出すということです。「1の呼吸」で練習します。

前述のポジション4の練習です。弱音をとても簡単にコントロールすることができます。必ず知っておかなければならないテクニックです。

e.明るい音色
 口を開き、軟口蓋に向かって息を吸いながら、「鎖骨の中央」「首の後ろの骨」「軟口蓋」の三点を緊張させます。矢印の方向へ引っ張られる感じです。
もっとも引っ張り合った状態で次の練習をします。
「蝶形骨」の蝶々が羽根を広げたように喉の奥を開けて「1の呼吸」にて練習します。

『蝶形骨』
頭蓋骨の一部である蝶形骨。蝶が羽根を広げたようなこの骨を開けるように感じることによって、豊かな響きの乗った音色が手に入ります。

f.跳躍の練習

高音への跳躍の練習は3点の緊張を一気に行います。喉を開ける練習の最終練習です。「アー」と声を出しながら、急にびっくりしたように「ホッ!」と息を吸います。その瞬間に3点の緊張を作ります。跳躍の直前に3点を一度に収縮させる練習です。

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